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上五島病院は長崎県五島、中通島のほぼ中央に位置する長崎県病院企業団の病院です。昭和35年11月に上五島町立国民健康保険診療所として開設され、昭和40年7月に町立上五島病院となり、昭和43年4月長崎県離島医療圏組合(現・長崎県病院企業団 NHA)設立により同組合上五島病院として発足しました。昭和61年6月には現在地に新築開院し、以降4回の増改築工事を行い、平成16年8月1日上五島地域5町合併とともに、病院施設、機能の強化を行いました。
上五島における地域医療はもとより、救急医療、在宅医療、検診など、地域における医療・福祉・保健の統合を目標に活動しています。
診療科:内科、外科、整形外科、泌尿器科、小児科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、精神科、消化器内科、神経内科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科の計15科。
病床数:186床(一般132床、療養型50床、感染症4床)
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地域とともに歩み信頼され親しまれる病院
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「長崎県上五島病院」
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丸山先生は、福岡県出身。今年3月に長崎大学を卒業した1年次の初期研修医です。
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丸山先生
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研修先として上五島病院を選んだ理由は?
ちょうど1年前の1ヶ月間の実習時の印象がとてもよかったことが一番の理由です。大きい病院だと、先生方の人数も多い分、実習の機会も少ないように感じていましたが、こちらだと学生という立場にも拘わらず、チームの一員として扱ってくれて、患者さんたちも同じように温かく接してくれました。また、上五島には入院施設はここしかなく、多種多様な症例が集まります。それで、ここでもう一度しっかり勉強させていただきたいと思ったんです。
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実際に働いてみて、ギャップのようなものを感じることはありますか?
去年、実習で来ている時に教えられた“目の前にあることに対して、とにかく一生懸命にやる!”ということを、実際に研修医としてここに来て2ヶ月、全力で実践しているという感じで、特にギャップを感じることはありません。今はとても満足しています
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将来の方向性と今後の自分に期待することは?
この地域ならではの特性だと思うんですが、患者さんの退院後のことや、地域の行政との連携の大切さを感じることもあります。
そういう中で、総合内科というか、家庭医というか、幅広く診れる医者になりたいと思うようになりました。
上五島病院で研修することによって、確実に臨床の能力は付くと思うので、考え方などもこれからしっかり身に付けて、何か強みを持つ医者になりたいと思っています。
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上五島病院の雰囲気はいかがですか?
上に3年目の先生がついて下さっていて、その上に指導医の先生がいて下さいます。垣根のない医局で、全体的に先生方が若いので、日常の患者さんのことを始め、診療方針や薬の処方のことなど、いろんなことの相談や質問もし易い環境です。
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上五島病院、そして五島のアピールポイントは?
上五島病院は、研修医の人数が少ない分、先生方が常に気にかけて指導して下さいます。もし関心がある方があれば、是非見学に来てほしいなぁと思います。
五島は、とにかく人がいいです。海がきれいです。原付のバイクをいただいて、それに乗ってぶらっとすることがあるんですが、風を感じて気持ちいいです。
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医者になる第一歩、“人を診る”ということを学んでほしい |
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指導医の本田先生。内科ローテートの6ヶ月間、研修医を指導されています。
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どのようなことに重点を置いて、研修医を指導されてますか?
一番大切なのは、技術士になるな!ということでしょうか。今の医療は、かなり細分化されて専門化が進んでいます。ただ病気というのは一つだけではない場合もあるし、専門領域の病気だけを治してもそれが全てではないこともあります。病気を診るにしても、それはその人の一部でしかないんです。ここは高齢者も多く、様々な疾患の患者さんがいて、疾患が重なっている場合が多い。そういう背景もあって、複合的に“人を診る”ということを学べるということが、上五島病院の特徴ではないかと思いますし、“医者になる”という第一歩がうまく踏み出せているんじゃないかと思います。
初期研修の2年間は、医者としてのマインドを築くためのものだと私は考えています。
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本田先生
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上五島病院の初期臨床研修の特徴を教えて下さい。
上五島病院は、多彩で稀な症例も集まる病院です。専門性を目指すというより、医者になりたい!と思う人が来る場所だと思います。
ローテートについては、基本的には、1年目に上五島病院でまず内科を6ヶ月、外科系を6ヶ月回ります。後半6ヶ月の間に小児科や整形外科を入れたりする場合もあります。そして2年目は長崎医療センターで残りの必修と選択科目を回ります。
それぞれの強みをいいとこどりができるいわゆるたすき掛けの研修です。
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上五島病院 基幹型臨床研修 基本ローテート(例)
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救急科、麻酔科、産婦人科:長崎医療センター
精神:長崎県精神医療センター
地域医療:有川医療センター奈良尾医療センター、小値賀町国民健康保険診療所から1施設選択にて研修する。
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院長 八坂先生にお話を伺いました。
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上五島病院はどんな病院かその役割を教えて下さい。
長崎県上五島医療圏、人口22,000人の新上五島町の中核病院として、主に二次医療の中心を担っているという位置付けの病院です。
現在は、統合再編により、新上五島町での入院施設は当院のみ、あとの2つの施設は診療所という形態で、県と市町が出資して長崎県企業団が運営管理する病院です。
特に離島やへき地では、医療部門に加え、予防などの保健部門、そして福祉部門が重要になってきます。医療部門の中でもその末端であるリハビリや在宅診療など、福祉に関しては療養型病棟や周辺の老人保健施設との連携などに関わっていかなければならないという状況にあります。
特に高齢者が多い環境ですので、そういった意味でのトータルケアをするということがこの地域で求められている役割だと思っています。
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八坂先生
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トータルケアについて少し詳しく教えて下さい。
まずは地域住民の健康管理という意味で、健診や健康教育などのお手伝い、保健所や町と連携して健康活動をやったりしています。
次に医療に関しては、健診をベースにした診療、疾病の早期診断、早期治療ということが一つの目標です。救急に関しては、二次救急の中心として24時間体制で現在年間600件ほどの救急車を受け入れています。専門領域(脳外科・心臓外科・未熟児・多発外傷など)の疾患に関しては、こちらで的確に診断をつけながら、ヘリ搬送をして三次救急に繋げていきます。
もう一つの特徴としては、病床数は186と小さい病院ではありますが、地域唯一の病院ですから、小児科・周産期・精神科も含め、地域のために必要な医療というのは専門分野(の医師)が対応できる体制をとっています。
そして在宅医療に関しては、訪問看護ステーションを併設しており、病院のドクターが週に1.2回診療に行きますし、看護師が訪問看護にあたり、リハビリも一緒に行っています。
急性期医療が終わった後の慢性型医療については、療養型病床を50床用意して主にここでリハビリをして、在宅に返すという流れを作っていきます。
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研修医が上五島病院で学ぶ利点を教えて下さい。
まず第一に、地域医療のコーディネーターという中心的な役割は、医師がやらなくてはならないと考えています。保健・医療・福祉の連携の中心、チーム医療の中心は医師であり、その医師がどのように考え、地域の医療を展開していくか、アイディアマンであり、ビジョンを持った人であることが必要です。そういったことを常々考えられる環境にあると思います。
第二に、島は地域が優しく、患者さんも優しいので、医師と患者さんの関係が作りやすく、医療スタッフと患者さんの関係も非常に濃厚に繋がっています。医師としてのトレーニングには最高の地域環境、医療環境であると思っています。
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今後の研修医に求められることは?
医師である前に一人の人間として、社会的にどう生活ができるか?社会の中にどう溶け込めるか?社会をどう理解するか?ということはまず持つべき姿勢だと思います。
医師になってから求められるのは、医療というものをわかった医師でなくてはなりません。日本の医療の形がどうなっているのか?総合性と専門性がこれからどうなっていくか?最初の2年間で地域の医療の実態を理解した上で、将来の方向性を決めて進んでいくことが大切なんじゃないかと思います。まず医師としての基本的な考え方や医師としての人間力をつけるために、2年間を過ごすことも重要だと思います。
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五島うどん。
これまた特産の椿油を表面に塗りながら延ばして作る手延べのうどんです。
上五島病院の食堂のえび天うどんは、あごだしが効いてとってもおいしいですよ(*^^)v
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そして何と言っても新鮮な海の幸。
豪快かつ繊細なお料理は絶品です。
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頭ヶ島天主堂は、西日本唯一、また全国でも珍しい石造りの教会堂で、中の装飾は五島のツバキがモチーフになっています。
ユネスコの世界文化遺産暫定リストへの掲載が決まった「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を構成する教会の一つです。
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取材後記
院長先生をはじめとして、上五島病院の先生方や職員の皆さんと地域の方々との強い信頼関係を随所に感じる取材でした。心の温かい方々にたくさん出会いました。病棟での写真撮影をお願いしたところ、快く受けて下さった患者さん、その患者さんに「ごめんね。カメラ向けられると緊張するよねぇ。僕も緊張してるもん。」と気遣う研修医の丸山先生のやさしい言葉がとっても印象的でした。
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